「見えちゃった」
リビングのソファで参考書を開いていたら、桃愛が帰ってきた。
「ただいまー、お兄ちゃん」
制服のまま、僕の向かいに座る。スカートがふわりと広がって——
「……っ」
「ん? どしたの?」
にこにこしている。絶対わかってる。
「なんでもない」
「うそ。今、見たでしょ」
「見てない」
「じゃあなんで目逸らしたの」
桃愛が身を乗り出す。机の下で、わざとらしく足を組み替えた。白い布地が、また、ちらりと。
「女の子はね、どこ見られてるか、全部わかるんだよ?」
「……勉強中」
「へえ。集中できてる?」
できるわけない。
桃愛は満足そうに笑って、立ち上がった。部屋に戻りかけて、ふと振り返る。
「あ、今日のパンツ、いちごだよ」
「聞いてない」
「明日はどうしよっかな」
ひらひらと手を振って、階段を上がっていった。
参考書の同じページを、もう三十分見つめている。